2006年09月29日

石坂和彦「越後荒川堂夜話」



いらっしゃい。
本屋が本読む閑古鳥ですよ。

古本荒川堂の女店主が楽しみにしているのは、手柄もたてず出世もせずの元刑事「涙さん」の昔語り。
許婚を捨てて都会へ行った女、里心を出して子守の最中に山へ入った少女、人助けのために稀覯本を燃やした同級生、山深くの滝壺で兄弟に自殺を止められた女が隠していた事実、弟の将来のために自らの将来を閉じた姉。
どれも凄味のある話で、古本屋が舞台の漫画としては、これ以上のものを読んだことが無い。人情話でありながらも、決して安易に流されない構成は、全く見事の一語に尽きる。
圧巻は第7話の「花子」。
数年ぶりに出稼ぎから帰ってきた男が迷い込んだ渓谷で出会った女の執念と怨念が凄まじい。

古書を扱った物語の多くは、愛惜や冒険を絡めてしまうが、それゆえに内容は薄っぺらになりがちだ。古物骨董の類は浅ましい人間が跋扈する世界だから、それを直視できないと描き切れない世界でもある。多くの古本・骨董関連漫画が安易なものだったり、奇抜なものに成り下がってしまうのは、書き手に覚悟が無かったり、世界を直視出来るほど深みが無いせいだろうと思う。
だからオレはこれまで、古本・骨董関係漫画を(少しは目を通すが)蔑んできたが、これを読んで目から鱗が落ちた。
こんな書き方があったとは、まさに晴天のヘキレキ。
舞台が古本屋でありながら、本に関する薀蓄めいたいやらしい話を描かない(一話だけ楚囚之詩の話があるが、それはあくまでも人間を描くための道具)。それがむしろ迫力を出しているのだ。

実はこの本、ずっと以前から店にあったらしいのだが、つい先だってダンボール箱の中から発掘したばかり。いつ、誰から買い取ったものか、全く記憶に無い。こんな凄い本を、何も知らずに寝かせていた自分が愚かしい。

とにかくこの本は、誉めても誉めても誉め足りないくらいだが、ここでこうして誉めちぎると、ヤフオクなどに出せなくなるのが辛い。個人的な評価としては、1000円取っても問題ないとは思うのだが、だからと言って1000円からの出品などしては浅ましくなってしまう。自信を持って売れる本が、売れなくなる瞬間。それはここで紹介した瞬間。まあ、オレの気が小さいということもあるのかもしれないし、それだけオレが善人であるということなのかもしれない。
こうなっては仕方が無いので、1日100円で貸し出しをするに留めようと思う。延滞金は1日1000円としよう。

・・・な?古本屋って浅ましいだろ?
posted by 肉王 at 22:41| Comment(3) | ブックレビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月25日

祓ってもっとBaby

オレは心霊現象とかUFOとかいうものを信じていない。信じてはいないが、それ関連の本をよく読む。バカバカしくて面白いというのもあるが、ある意味夢があるような気もするのだ。
自縛霊だとか浮遊霊だとか、アダムスキーだとか葉巻型だとか、まあよく考えるもんだ。偉いよ。最近よく聞くのはオーヴ。飛蚊症みたいなモンが見えたら、それが霊の姿だってんだから面白い。あれって、空気中の埃がおこしている静電気じゃないのかと思うのだが、どうだろうか。

オレの店には時々ヘンな客が来る。どこの店にもヘンなのは来るのだろうが、客数の少ないオレの店にとっては「そんなのばっかり」感がある。パーセンテージの問題だろうな。
さて、以前来た女性。歳の頃なら35〜40歳といったところ。身なりに変なところはないが、挙動が変。店の中をキョロキョロ見渡しながら、いつまでもウロウロしている。本を探している様子でもないし、貧乏な古本屋を観察している、という風情でもない。目線が物の無いところ(天井や中空)をさまよっている。まるで、飛び回っている蠅でも追っているようだ。もし蠅だったら心配ない。この前ぶら下げた蠅取り紙が放って置いても仕事をしてくれるからな(その蠅取り紙は結構ナニな状態になっている)。それに食べ物屋じゃないから蠅がいたって余り影響はない。
「何かお探しですか?」
オレは面倒くさそうな客や、明らかに暇つぶしの客には積極的に声を掛けておくことにしている。そうして、用が無いならさっさと帰れという雰囲気を作るのだ。相手が中学生や高校生だと、もっと露骨になり、「用が無いなら出て行け」とはっきり言う。
女は、しばらくオズオズとしていた。
「あのね、あなた、この店には悪い霊が沢山いますよ」
「ワルイ=レイ?」(アムロ=レイじゃないの?)
「オーヴがいっぱい飛んでるんです」
「オーヴ?」
「オーヴ」
「で・・・?」
「お祓いをした方がいいんですよ」
「誰が?」
「あなたがです」
「何を?」
「悪い霊を祓うんです。このままだと危険です」
「誰が?」
「あなたがです!」
「お祓いなんか出来ませんよ」
「私たちがやってあげますよ」
「何を?」
「お祓いです!」
「・・・オーヴってナンですか?」
「浮遊霊のことで、悪いものが多いんです」
「おかしいな。霊なんて見たことないけどな」
「普通の人には見えないんです。私たちは特殊な修行をしたので見えるんです」
「見える人には影響あっても、見えない人には影響ないんじゃないですか」
「見えなくとも悪い影響が出ます」
「例えば?」
「体の調子が悪くなったり、取り憑かれたりするんです」
「なんか出鱈目なこと言ってません?」
「出鱈目なんかじゃありません!」
「好意で言ってくれているんですか?」
「もちろんです」
「さっき、私たち、て言ってましたけど、お祓いを頼むと、後で色んなヤツラが来てなんだかんだって何回も何回もカネを請求する人たちでしょ」
「そんな事はしません」
「大体ね、古本屋にある本てのは、死人の本棚から持ってきた本も沢山あってね、中には恨みつらみをそのまま引きずった本もあるし、思いが残っている本もあるしで、言ってみれば人の魂そのものなんだよ。そりゃ店の中に霊くらいいるんじゃないの。そんなのいちいち祓えるの?」
「でも、このままじゃあなた死にますよ」
「お祓いのセールスってのは、目の付け所はいいけど、相手みないと大怪我するよ」
「じゃ、あなたは死んでもいいんですね」
「あんたに言われることじゃないだろ。それとも、あんたがオレを殺すってことか」
「私たちなら出来ますよ!」
「なんだ。最初はオレの命を守るとか言っておいて、今度は殺すってか。なんなの、お前?何しに来たんだよ」
女はハッとして、無言のまま早足で店を出て行った。
ちょっといじめちゃったなあ、と反省した。
でも、最近はタチの悪い商売が増えたな。古本屋以外に、タチの悪い商売なんていらないのにな。
posted by 肉王 at 02:01| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月22日

路上のルール

今だけは優しい歌を歌いたくない皆さん、こんにちは。盗んだバイクで走り出して自由になれた気がした山多太郎です。

いやもう、ただこれが書きたかっただけで・・・。
posted by 肉王 at 00:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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