2007年12月29日

呪いのライター

なんかもう、年の瀬ですな。
今年は同業者どもがアワアワと潰れていって、面白かったですな。
来年はどこが潰れてくれるんでしょうか。
と言いながら、実はもうすでに某店へ廃業のタネを仕込んであるんですよ。
先だって名取市のナントカスリーって店に遊びに行ったんですがね、その時にオレ様愛用のジッポを置いてきました。それはまさしく「呪いのジッポ」ですよ。オレがかつてそのジッポを置いて行った店は、必ず呪われてしまうんですなぁ。
多賀城の店も、鶴が谷の店も、そのジッポにしてやられてるんですよね。アッハッハ。愉快だね。
オレの店は、31日の午後5時まで営業して、来年は3月15日頃から開店しますから、もうジッポを返す機会も無いね。
こんなことで次々と同業者が消え去っていくのは淋しいことだけれど、それこそが世の常だから仕方ないよね。
じゃ、第二の人生も頑張れよタカギ。
posted by 肉王 at 19:44| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月24日

番付頂戴(第一話)

世の人の言うには、人間には生まれつき運のいいヤツと悪いヤツがいるらしい。他人様が有難がる物差しなんてアテにしやしないけれど、横目で盗み見る程度には気になるものだ。自分なんかどんな物差しで測ったってきっと運の悪いヤツの部類なんだろうが、じゃァ運の良いヤツてのはどんな野郎のことなんだかピンともこない。何をやっても上手くいくヤツなんて見たことは無いし、ボンヤリしていても楽に生きていられるヤツも見たことが無い。家が金持ちでも御面が良くっても羨ましいとは思えないし、逆に貧乏だってブ男だって気の毒だとも思わない。せいぜい丁半のサイコロが思うように転がるヤツはなるほど運が良いんだろうと思うこともあるが、それだって始終ツキッぱなしのヤツだなんてのも見たことが無い。
ただし、たいした力も無いのにスイスイと昇進するヤツをみると、面白く無いような嫉ましいような心持ちになって、ツイてやがんのさと思わないことも無い。そうじゃなきゃ、きっとヨイショがうめぇんだろうと決め込んで軽蔑する。
江戸っ子の性分なんだか親の躾のせいなんだか、自分は生れ落ちて以来のへそ曲がりで、何でもかんでも素直に受け付けることを良しとしない。だから努力だとか精進だとか、道をまっつぐ行くような教えは虫唾が走るほど嫌いだ。「あいうえお」を「ん」から覚えるほどじゃないにせよ、それでも前座だからといって前座噺ばかり覚えて喜んでなんかいられやしない。出来もしないのに大ネタを覚えて鼻息を荒くしたりするが、なァに、腹の中じゃあハラハラしている。
師匠は江戸時代生まれの老いぼれで、ウソか本当か三笑亭可楽と行き来があったのがたったひとつの自慢だった。後になって考えると、特別に噺が上手ということもなし、ましてや名人と歌われたことも金輪際無いという正直者だが、噺家が正直者といわれちゃアこれほどみっともないことも無い。ただし偉いところもあって、遊び金や散り銭をケチらず貯金も借金もなく、それでいて見栄もはらずにみすぼらしくも無いという高潔さがあった。そして、「人情噺は素人騙しの芸だよ」といって憚らず、大ネタを嫌って軽い噺ばかり好んでやった。色々と腹の立つことやもどかしさのある師匠だったが、自分はそういうところが好きだったのだと思う。
そういう師匠の下で見習い二年、前座を三年、二つ目で七年過ごして、本日ようやく真を打ちますという披露目の日は、朝から全くおかしな天気だった。
雨が降っちゃあ止み降っちゃあ止みしていたが、それがピタリと止んだと思った途端に、まるで嫌がらせか落語の神様の恫喝のように関東中の地面が大揺れした。それが「関東大震災」だなんてことは、ずっと後になってから知った。それよりも、寄席はおろか自分のねぐらもおシャカになるし、師匠も建物の下敷きになってぺしゃんこになるしで、自分の人生の晴れの日が余震と火災から逃げ惑うだけの日になっちまったのがたまらなく切ない記憶としてだけ残っている。
結局予定の全部がパァになり、その後に改めて披露目を行うこともしないで真打になった。真を打ったとは言え、肝心の寄席がどこもかしこも潰れちまったから、即刻失業したような捨て鉢な気分になって、じゃァ高座名も「御釈迦家御鐘(おしゃかやおじゃん)」にでもしてやろうかなんて洒落てみたが、誰も彼も自分のことで忙しくって、相手にもしてくれやしなかった。だもんで師匠から貰った「夏場亭風流」をそのまま名乗ることにした。

幕末の御一新直後に生まれた親父は日本橋でも悪名高い暴力車夫で、客は車の蹴込みに足を乗せたが最後、懐がすってんてんになるまで引き回される。親父の言い草では「走りもしねぇでゼニふんだくるよりかはマシ」なんだとかで、強盗が追いはぎを罵っているンだか追いはぎが強盗をくさしているンだか分からないようなことを言っていたが、親父なりにも一分の理があったということなんだろうと思っていた。その親父がある日、運の悪そうな噺家を引っ掛けた。市中を散々引き回した挙句、オぅオぅこちとら日本橋じゃァ名の知れた、と法外な車代を請求したところ、噺家は「ああそうかい、ご苦労サンだね」と懐から札入れを取り出して言い値を払ったうえ、「もうちっと払うからとっとと寄席までつけておくれよ。あんたァすこぅし足が遅いようだ」と悠然と言い放った。学の無い親父のことだから、カネの多寡でしか人や世の中を量れないのは無理のないこととしても、この一件ですっかり噺家なんて人種を誤解してしまったのは如何なものかと思う。以来、ことあるごとに「噺家ってのは偉ぇモンだ。見習わなくっちゃな」と言っていたが、だからと言って暴力車夫から足を洗うこともせずにいたため、人力車夫組合の車夫連中に懲らしめられ隅田川に叩き込まれた際、勢い余って死んでしまったようだ。ようだ、というのは、目撃者もおらず死体も見つからなかったためで、警察も暴力車夫の一人が死んだところで相手にもしなかった。
そんな親父でも一家の食い扶持を賄う大黒柱だったことには違いなく、一家はすぐに食い詰めた。母親は、三男一女を抱えて途方に暮れたが、もって生まれた器量のよさが幸いして、すぐに新しい大黒柱を見つけてきた。女房と畳は新しい方がいいというが、それを言うなら大黒柱だって同じ理屈ということだろう。その頃自分は十二にはなっていたし、ましてや箸にも棒にもかからない次男坊。さらには新しい大黒柱とはどうにも反りが合わず、朝な夕なのメシ時には必ず諍いが起こる。ガキなんてのは、ロクに物事も判断できないくせに自分の居場所が居心地のいいところかそうでないか敏感に察知するから、ある日、もうこんな家にはいられるかッとばかりに二歳下の三男を連れて飛び出した。別に三男の面倒まで見ようなんて了見じゃなくて、自分ひとりじゃ心細いから行きがけの駄賃よろしく引っ張っていっただけの話。その時にはすぐに連れ戻されたが、以来家出の癖が付いた。少しでも気に入らないことがあればプイと家を出て、また連れ戻されての繰り返しをしていたが、十五歳の頃に何度目かの家出を境にとうとう家には戻らなかった。学校も半端にしてしまったせいで、読み書きも算盤も怪しいままだったけれど、人足でいればどこの飯場へ行ってもあぶれなかったし、一旦潜り込んでしまえばあまり細かい話もされずに済んだ。
そこから師匠の元へ転がり込むまでの話なんてのは、まァどこにでもあるような話だから、人様に語って聞かせるようなモンじゃあない。
話の中心は、ひと息に昭和の匂いをおびたところへ移る。

−第二話へ続く−
posted by 肉王 at 23:35| Comment(4) | 番付頂戴 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月20日

恐ろしく退屈で悔いの無い人生

11月の初旬に受けた肺ガン検診で、「要精密検査」の判定を頂いた。にわかには信じがたいが、亀田興毅の判定よりも正確であろうことには違いない。
なにせこちとらロックンロール生活25年だ。忌野清志郎だって喉頭ガンになったのだから、オレだって肺ガンのひとつもガタガタゲッチュしていて不思議ではない。
精密検査の日は19日。午前中に仙台市内の病院へ来るベシとの指示を受けている。
そして当日。いつもならまだ眠っている時間だというのに、わざわざガンの診断を受けるために安い有料駐車場を探してうろついているオレ。ああ、今日の空はとっても青い。オレが死んだ後でも、空は変わらず青いんだろう。なんだか嫉妬しちゃうね。
というわけで、レントゲン撮影のあと、診断を受ける。
「じゃあ先生、私はこの後どう生きたら良いんですか」
「悔いの無いように生きるべきでしょうな」
「あとどれくらい生きられますか」
「その前に、診断結果をお伝えしますね」
「もういい。聞きたくないです」
「とりあえず全然問題ないですね。前回写った白い影は、肋骨の骨折の跡ですね。病院に行かないで治したでしょう?」
「そういえば昔、そんなこともありました」
「どころで先ほどの質問ですが。あとどれくらい生きるかは貴方次第ですので、どうぞご摂生してください」
「しかしさっき、悔いの無いように生きろとか何とか・・・」
「そりゃあ誰だって、どう生きるべきかと問われれば、どうぞ悔いの無いようにと言うでしょう。間違っていますか?」
「全然間違って無いですね」
病院から出て、また空を見上げる。
ちぇっ、まだまだ青いぜ。
そんでもって来年はロックンロール生活26年目か・・・。
posted by 肉王 at 19:58| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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